相続対策として一度整理したい「借入額」の考え方
件名:相続対策として一度整理したい「借入額」の考え方
いつもEMAコンサルティングのコラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。
今回は最近、相続対策を前提とした不動産活用について、ご相談をいただく機会がかなり増えてきましたので、この内容に触れさせて頂きたいと思います。
特にここ最近は、「相続を意識して、今のうちに不動産の整理や組み替えを考えたい」「借入を使った相続対策は、どこまでが安全なのか知りたい」といったお声を多く頂いています。
こうした流れもあり、金融機関の考え方にも少しずつ変化が見られるようになってきました。
単に「いくらまで貸せるか」という判断だけでなく、相続対策として成り立つかどうかを重視する金融機関が、以前よりも確実に増えてきている印象です。
その中で、よくご質問を頂くのが、「法人を活用することで、融資期間を延ばすことはできるのか」という点です。
この点について実務ベースで検証すると、法人を活用することで、融資期間を延ばせるケースは十分にあります。
個人での借入では、年齢による完済年齢の制限が意識されやすい一方、
法人の場合は、
・法人全体の収益力
・物件そのものの収益性
・長期的な事業計画
といった点を軸に審査されるため、30年以上の融資期間が組めるケースも決して珍しくありません。
相続対策を目的とした新築一棟マンションなどでは、法人借入を活用することで、相続時点でも借入残高を一定程度残す設計が可能になる場合もあります。
ただし、融資期間を延ばせるからといって、借入額を増やせば良い、という話ではありません。
私たちが実務で行う相続対策の融資判断は、単に「借りられる金額」を算出するものではなく、
年収・年齢・自己資金・既存借入額といった数値を踏まえながら、
税務・キャッシュフロー・承継リスクを同時に満たす「許容借入額帯」を導き出すことを重視しています。
例えば、相続対策として借入額を検討する際には、次のような点を同時に確認しています。
・建物割合が50〜70%程度確保できているか
・相続発生時点で、借入残高が十分に残る構造になっているか
・NOIに対する返済額が、DSCR1.25以上を維持できているか
・法人借入であっても、代表者交代や承継を前提に、返済計画が無理のない構造になっているか
・既存借入を含めた返済比率が、過度に高くなっていないか
これらのどれか一つでも欠けてしまうと、節税効果よりも承継リスクの方が大きくなってしまうケースは少なくありません。
そのため実務では、「いくらまで借りられるか」ではなく、「いくらまでなら借りてよいか」というレンジで判断します。
つまり、
・金融機関上限:2.5〜3.5億円
・相続対策として適正:2.0〜2.5億円程度
というケースは決して珍しくありません。
また、相続対策として新築一棟マンションが選ばれる理由も明確です。
・建物評価が高く、評価圧縮効果が出やすい
・長期融資が組みやすい
・初期の修繕リスクが比較的低い
・相続人に説明しやすい資産である
一方で、立地や賃貸需要、出口戦略を誤ってしまうと、「節税のために取得した不動産」が、将来の重荷になってしまうこともあり、相続対策における融資判断は、数字だけを見ても、なかなか答えは出ません。
ご年齢やご家族構成、資産内容によって、適切な形は大きく変わりますので、
私たちは初期整理として、概ね次のような点を確認させて頂いております。
・ご年齢およびご家族構成
・主となるご年収
・現在の資産状況(現預金・有価証券・自社株・年金等)
・総借入残高
・年間返済額
・年間の総収入
・保有不動産の評価(固定資産税評価額ベース)
これらを個別に見るのではなく、資産・負債・収入・承継のバランスとして捉え、相続対策として無理のない形かどうかを判断します。
相続対策は、早く動くことよりも、間違えずに設計することの方が重要だと考えています。
会員の皆さまにおかれまして、相続や借入、不動産の持ち方について、一度立ち止まって整理されたい点がございましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。
【補足】
一般的な相続対策の起点
50歳前後以降:この年齢帯から、次の条件が重なり始めます。
- 資産形成が一巡する
- 不動産・借入の全体像が見えてくる
- 子の年齢が将来の承継を意識できる段階に入る
- 借入期間(30〜35年)をまだ確保できる




